準2級に落ちた。まあ当然だ。私はすでにほぼタンスだから。
タンス検定。それはーー聡明な読者諸君にあえて説明する必要もないがーー人間が、いかにタンスに近付けるかを示す試験であり、勲章である。近付くといっても物理的距離ではない。(そんなもの、誰だってできる。中にだって入れる。)タンスに近い概念を目指す、尊い営みである。
試験は3つに分かれている。まるで3段のタンスのように。
一つは、筆記試験。自身の知識を、棚卸しする。一つは、実技試験。衣替えのように、大胆に。そしてもう一つが、面接だ。試験官とのタンスィズムのぶつかり合いは、ニトリとIKEAの代理戦争のようだ。
近頃は実施する国が続々と増えているようで、国連議会ではたびたび「愚かな行為」として議題に上がるものの、「あいつらはあいつらなりに楽しくやってるから放っておいてやろう協定」の立ち上げ以降、見てみぬふりをされているのが現状だ。
さて、やや説明が長くなってしまったが、話は冒頭に戻る。私は、自分で言うのもなんだが、非常に高いタンスィズムを持っているほうである。ゆえに、準2級など簡単に合格できるつもりで、ふらりと受験した。それが、いけなかった。筆記、実技はそつなくこなし、最後の面接。そこで私は、やってしまったのだ。
タンスになりきって回答するフェーズで全力を出すあまり、タンスィズムが限界を超えた。試験官は、「私が途中で出ていき、その場には年季の入った漆塗りのタンスがぽつりと残されている」と錯覚したのだという。彼らのタンスィズムを凌駕してしまったため、不合格となったのだ。
この話はいつの間にやら知れ渡り、今となっては「優れた者が準2級に落ちた」ことで、タンス検定協会がきついバッシングを受けているようだ。タンスの不買運動まで勃発している。協会は別にタンスの製造・販売は行っていないのに……と湿っぽい顔をしている職員に、除湿剤でも渡しに行こうか。
結局、私は繰り上げ合格&特進措置により、今ではこの世に25人しかいない殿堂入りタンスの称号を賜った。早速履歴書に書き、地元のコンビニバイト面接へ駆け込む。タンスィズムを熱く語る私に、店長が身じろぎしたのは忘れもしない。バイトは、不合格となった。これも話題になってほしいが。