ヘメィスモに見る「自己認識なき模倣」の末路

極寒の氷野に生息する海鳥、ヘメィスモ。彼らの群れを観察していると、こいつらの多様性とその怖すぎる習性に、乾いた笑いが出る。

基本的にはペンギンにツノとキバを足したような風貌だが、その体つきは個体ごとに恐ろしいほど異なる。ある者は流線型の細い胴体に滑らかな羽を持ち、ある者は分厚い骨格とぶっとい脚を持つ。警戒心が強い者もいれば、マイペースな者もいる。
彼らが氷野を生き抜く条件とは、自分の出来をわきまえて、身の丈に合った行動をとることだ。

しかし、春が来てヒナが育つ頃、群れの中には必ず”どうかしている”個体が一定数現れる。
自らの骨格や羽の性質を確かめることもせず、自らの頭で考えることもせず、ただ「群れの中で最も目立っている者」や「多数の者が熱狂している振る舞い」を、無批判に模倣する者たちだ。

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勢いよく海へ飛び込んで魚を得た個体が出たとする。群れの中で一気にその狩りの手法が広がっていく。
しかしそれは本来、泳ぎに有利な流線型の個体だからこそ成立する手法だ。そうとも知らず、無駄にマッシブな走り屋の個体までもが、その熱狂の列に加わってしまう。
彼らは「なぜその場所から飛ぶのか」「なぜ浮上できるのか」といったことは考えない。ただ、多くの者が採用している身振りや軌跡をそのまま反復すれば、自然とメシが食えるはずだと思い込んでいるのだ。
陸上型の個体は、見よう見まねで岩場から躍り出る。そして、自らの体を浮かせる機能がないことに気づかぬまま、静かに暗い海底へと沈んでいく。

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どこかの個体が偶然鳴らした奇妙な声や、ヘンテコな求愛のステップがあるとする。それがなぜか群れの一部で波及し始めると、自身の声帯や関節の構造に合っていない者たちまで、こぞってその身振りを不気味に真似し始める。「群れの多くがそうしているから」という理由だけで、もう、それだけしか見えなくなるのだ。
結果として、彼らは本来の狩りや繁殖の機会を逃し、不毛なステップを地獄に向かって踏み続ける。

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考えなしに多数の影に紛れようとする者たち。彼らは自分こそが群れの中心だと思い上がっているが、実際には死に体だ。
では、自滅していく彼らに対し、群れはどう反応するのか。

答えは、沈黙。

海底へ沈んでいく肉塊を見ても、不気味なステップで力尽きる道化を前にしても、ヘメィスモの群れは立ち止まらない。
哀れまれないどころか、もはや笑われもしない。

激しい吹雪が、彼らの無意味な足跡を白く塗りつぶしていく。後には、何も残らない。